第193回 令和7年12月12日
1.南九州における火山性地殻変動源の時間変化とプレート間すべりとの同時推定
宗包 浩志(地殻変動研究室長)
地殻変動データから火山性地殻変動力源の体積変化を推定する際、プレート間すべりなどによる非火山性の地殻変動を補正する必要があるが、南九州では、日向灘南部のゆっくりすべりや日向灘の地震後の余効変動により、従来非火山性の地殻変動を補正するために用いられてきた多項式補正では補正が困難となっている。
本研究では、アンサンブルカルマンフィルタを用いて、火山性地殻変動力源の体積変化とプレート間すべりを同時推定する手法を開発した。
発表では、手法の妥当性を検証するとともに、推定結果を火山活動と比較して解釈することで、火山活動評価への有効性を議論する。
2. 仙岩火山地域におけるGNSS及びSARを用いた地殻変動モニタリング
姫松 裕志(地殻変動研究室)
本講演では、東北地方の火山地域を対象として、GNSSおよびSARデータを用いた火山性地殻変動の時空間変化を報告する。2011年東北地方太平洋沖地震の余効変動をはじめとする広域の変動を高次の関数で近似して補正することにより、長期にわたる火山性地殻変動の抽出を試みた。また、時間依存インバージョンによる圧力変化量の時間変化の推定にSARデータを導入した場合の効果についても報告する。
第192回 令和7年11月21日
1.強震計及びGNSS観測記録を用いて推定した地震動分布と土砂移動分布の関係
遠藤 涼 (地理情報解析研究室)
地震時の土砂移動を評価する上で、強震計で観測された地震動データが用いられる。一方で、強震計の設置密度がまばらであることで、地震動と土砂移動が対応しない事例がある。そこで本研究では、強震計の地震動データとGNSSの観測データを用いて面的な地震動を推定し、土砂移動分布との関係を解析することで、GNSSのデータの追加による影響を評価した。
第191回 令和7年10月17日
1.日本周辺の海洋質量変動とそれに伴う地殻変動
松尾 功二 (宇宙測地研究室)
海洋質量は潮汐や気候変動に伴い変化するが、日本周辺では黒潮大蛇行など地域特有の要因も重なり、特に顕著な変動が生じる。これに伴う地殻変動(荷重変位)は、GNSSやVLBIなど測地観測の誤差要因となる。
本研究では、測地観測の高精度化と基準系維持の高度化を目的に、衛星重力(GRACE)、海面高度(altimetry)、Argoフロートの観測データを統合的に解析し、日本周辺の海洋質量変動とそれに伴う地殻変動を推定する。
2.地震時の斜面崩壊に対する脆弱性を考慮したゾーニングマップの構築とその利用案
岩橋 純子 (地理情報解析研究室)
地震時の斜面崩壊に関する脆弱性を考慮し、地形地質や土壌等、斜面崩壊の危険度やタイプに影響を及ぼすと考えられる因子によって斜面を区分したマップをゾーニングマップと位置づけ、1/4地域メッシュ(約250m)の解像度で作成した。
マップの利用案として、現在SGDASで使われている脆弱地質マップの更新版のほか、斜面崩壊の発生可能性をゾーニングマップと震度-発生可能性マトリックス表で推計する方式を新たに開発した。
第190回 令和7年9月12日
1.西南日本のGNSS時系列の実データの機械学習によるスロースリップ検出
田中 優介 (宇宙測地研究室)
稠密かつ長期間蓄積したGNSS時系列から効率的かつ客観的にスロースリップのシグナルを検出するために、これまで多彩な統計数理技術が用いられてきた。一方で機械学習を用いた例は依然少ない。
本発表では西南日本の座標時系列の実データの学習によるシグナル検出を試みた結果を紹介し、特に単点と隣接2観測点を用いた検出結果について特徴を比較議論する。
そして、実データのノイズ特性を直接考慮した検出手法の確立に向けた課題を示す。
2.DEM地形解析による礫-砂遷移地点の推定手法
吉田 一希 (地理情報解析研究室)
河成低地の地形分類では、低地の表層がどのような粒径の堆積物で構成されるかが重要な分類基準のひとつとなる。
扇状地と蛇行原(氾濫原)の間には縦断勾配の不連続があり、礫-砂遷移とよばれる河床堆積物の粒径の遷移地点と一致することが多い。礫-砂遷移地点を境界として洪水や地盤の特性が分かれるため、その位置の把握は自然災害リスクの推定に重要である。
本講演では、日本の河成低地と世界中の礫-砂遷移地点を対象に、堆積物の粒径と縦断勾配・集水面積との関係を調査した結果について報告する。
3.活断層の活動履歴を常時微動計測から探る
小荒井 衛 (地理情報解析研究室 客員研究員、茨城大学大学院理工学研究科(理学野)教授)
常時微動計測から地下のS波速度構造を把握し、基盤岩や段丘礫層のズレを推定し、活断層の活動履歴の把握を行おうという研究に最近取り組んでいるので、その成果を紹介する。
福島県浜通りの双葉断層、2011年4月に活動した福島県いわき市の塩ノ平断層、2011年3月の長野県北部地震で被害が集中した新潟県津南町の宮野原断層、2014年の長野県北部地震で活動した神城断層、新潟県小千谷市の山本山断層などで検討した事例を紹介する。
露頭やボーリングデータのあるところで計測を行うことにより、地下構造とS波速度構造との対応が明確になり、その結果を元に面的に計測を展開することで、精度良くボーリングデータの無い地点での地下構造の推定が可能になる。特に断層活動を繰り返すことにより、断層低下側で軟弱な地層が厚く堆積している様子が復元できた。
第189回 令和7年7月18日
1.SAR干渉解析における地形縞シミュレーションの高速化
石本 正芳 (宇宙測地研究室)
SAR干渉解析は、衛星から地表を2回観測して得られる電波の位相差を用いて地殻変動を検出する技術である。
位相差には、衛星の軌道や地形による位相差(軌道縞・地形縞)が含まれるため、これらを推定・除去する必要がある。この処理が地形縞シミュレーションである。これまで、この処理に膨大な時間を要していたため高速化を試みた。
本発表では、開発したプログラムの紹介と開発を通じて生じた疑問について議論する。
2.長期ペアを組み合わせたLバンドSARの干渉解析の有効性
小林 知勝 (宇宙測地研究室長)
ALOS-2衛星の打ち上げ以降、約10年間にわたるSARデータが蓄積されてきており、中・長期の地殻変動をLバンドで面的に捉える環境が整いつつある。
さらに2024年7月に打ち上げられたALOS-4衛星とALOS-2衛星は干渉解析が可能であり、今後、より長期のデータで干渉SARによる地殻・地盤変動を連続的に観測できることが期待される。
本発表では、こうしたLバンドSAR衛星による長期ペアを利用した解析から地殻変動を抽出した結果について報告する。
第188回 令和7年3月28日
1.SAR干渉画像における山岳斜面に生じる位相差の評価に向けた試み
服部 晃久 (宇宙測地研究室)
山岳部を対象としたLバンド干渉SAR(InSAR)解析では、斜面のfar側とnear側で、地殻変動に由来しないと思われる特徴的な位相差が観測されることがある。この現象の原因を定量的に評価することを目指し、ALOS-2の観測データを用いSAR干渉解析結果と、地表面の傾斜角、降水量との関係性について調査を行なった。本発表では北海道日高山脈を対象に試験的な結果について報告する。
2.日向灘で最近発生した2つの地震に伴う地殻変動
矢来 博司 (地理地殻活動研究センター長)
日向灘で2024年8月8日にM7.1の地震が発生し、南海トラフ地震臨時情報が発表されたことは記憶に新しい。この地震の近傍で2025年1月13日にM6.6の地震が発生した。これらの地震時の変動とその後の余効変動、推定された震源断層モデル等について、地震調査委員会等に報告された内容を基に紹介する。
第187回 令和7年2月21日
1.令和6年能登半島地震(その1) ~地震前・地震時・余効変動~
宗包 浩志 (地殻変動研究室長)
2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震の発生域周辺では、2020年末から群発地震を伴う地殻変動が発生していた。また、地震に伴い4m以上の隆起を伴う大きな地殻変動が発生するとともに、その後の1年で最大5cmに達する余効すべりが観測されている。本発表では、それぞれの地殻変動の発生メカニズムを報告するとともに、相互の位置関係の特徴や過去にこの地域で発生した地震との関連などについて議論する。
2.令和6年能登半島地震(その2) ~半島内陸部の局所変動~
小林 知勝 (宇宙測地研究室長)
令和6年1月1日に発生した令和6年能登半島の地震に伴い、半島内陸部において生じた、長さ数km程度の断層運動に起因すると思われる局所的な地表変位(いわゆる「おつきあい断層」)について報告する。本報告では、地震前後および地震後のSAR干渉画像を精査することにより、羽咋郡志賀町の北部等で見つかった、断層運動に起因すると思われるリニアな変位不連続を紹介し、能登半島(特に西部)の断層系との関係について議論する。
第186回 令和7年1月17日
1.InSARデータを用いた2024年の台湾の地震の地殻変動について
桑原 將旗 (地殻変動研究室)
台湾はフィリピン海プレートとユーラシアプレートの衝突によって形成された島で、世界有数の地殻変動の活発な地域となっており、テクトニクス的に大変興味深い地域である。2024年4月に台湾東部を襲った花蓮地震は、気象庁マグニチュード7.7を記録する大地震となった。本研究では、InSARデータを用いてこの地震による地殻変動を面的に観測し、その変動を説明する断層モデルを構築した。その結果、比較的単純なモデルでも地殻変動をある程度説明できることが分かった。さらに、より複雑なモデルも構築して比較検討を行う。
2.異なるIGS解析センターの暦を用いたPPP解間の整合性
中川 弘之 (宇宙測地研究室)
これまでの研究で、IGS最終暦を用いた場合とJGX暦を用いた場合とで、電子基準点のPPP GPS解に系統差が見られることが明らかになった。本研究では、PPP解に暦の違いが及ぼす影響を把握するために、IGS最終暦のPPP解に対する、JGX暦及びそれ以外の複数のIGSの解析センターの暦のPPP解の差を計算して整合性を調査した。その結果について報告する。